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大きな待機手術をうける患者における術前ヘモグロビン値と鉄の状態、大規模多施設コホート研究

・大きな外科手術をうける患者での術前貧血は、芳しくない転帰と関連している。それゆえ、術前貧血を早く認識し治療することが推奨されている。しかしながら、術前貧血管理プロトコールを効果的に実施するには、術前貧血の罹患率や原因を評価する必要がある。

・我々は以下の手術を予定した3342人の患者(44.5%が女性)から集めたデータを分析した:待機的整形外科(n=1286)、心臓手術(n=691)、大腸直腸癌切除(n=735)、根治的前立腺全摘(n=362)、婦人科手術(n=203)、肝転移切除(n=122)。男女とも、貧血の定義は以下の通りで、ヘモグロビン値< 130g/l、フェリチン値< 30ng/mlにみられる絶対的鉄欠乏(トランスフェリン飽和率< 20%やC-反応性プロテイン値> 5mg/l の場合は、フェリチン値< 100ng/ml)、トランスフェリン飽和率< 20%とフェリチン値> 100ng/mlにみられる鉄の隔離、トランスフェリン飽和率> 20%とフェリチン値 30-100ng/mlにみられる貯蔵鉄減少。

・全体としての貧血の罹患率は36%で、術式により違いが見られた。鉄の状態を分類できる検査値を利用できたのは、2884人であった。貧血の患者(n=986)のうち、677人(69%)が女性で、608人(62%)が絶対的鉄欠乏を示し、101人(10%)が鉄隔離で、150人(5%)が貯蔵鉄減少であった。鉄の状態の変化は、ヘモグロビン値が130g/l未満でも120g/l未満でも女性では同様であった。貧血でない患者(n=1898)では、上記の患者数はそれぞれ、656人(35%)、621人(33%)、165人(9%)、518人(27%)であった。

・貧血は、大きな待機手術をうける患者の3分の1にみられた。貧血患者の3分の2を超える方々が、絶対的鉄欠乏か鉄隔離をみとめた。貧血でない患者の半数以上で、絶対的鉄欠乏か鉄貯蔵減少をみた。こうしたデータは、大きな待機手術を予定した患者の術前管理を計画するのに役立つだろう。

by anaesthetist | 2017-04-10 23:55 | 術前・術後管理 | Comments(0)