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大腰筋筋溝ブロックと大腿神経ブロックの比較:危険性と利点のレジストリー分析

・大腰筋筋溝ブロックは大腿神経ブロックの代わりになるものであり、腰神経叢全てをブロックできる利点がある。しかしながら、大腰筋は深部にあるため、大腰筋筋溝ブロックは大腿神経ブロックよりも難度が高い。対照的に、大腿神経ブロックは一般的に施行しやすいが、鼠径部は感染しやすい。したがって我々の仮説として、大腰筋筋溝ブロックは大腿神経ブロックよりも穿刺に関連する合併症が多いが、カテーテルに関連する感染は少ない、としてこれを調べた。

・22434の手術症例をドイツ区域麻酔レジストリーネットワーク(2007〜2014)から抽出し、大腰筋筋溝ブロック(n=7593)と大腿神経ブロック(n=14841)に分類した。穿刺関連合併症(単一穿刺とカテーテル留置を含む)と感染合併症(カテーテル留置のみ)をそれぞれの群でカイ二乗検定で比較した。両群の比較は多変量ロジスティック回帰モデルでおこない、潜在的な交絡因子で調整した。

・潜在的な交絡因子で調整した後、大腰筋筋溝ブロックは大腿神経ブロックよりも合併症が多く、血管穿刺では6.3% vs 1.1%で調整オッズ比(aOR)は3.6(95%信頼区間[CI]、2.9〜4.6;P<0.001)、頻回の皮膚穿刺では12.6% vs 7.7%でaORは2.6(95% CI、2.1〜3.3;P<0.001)であった。大腰筋筋溝ブロックはまた、カテーテル関連感染は少なかった:0.3% vs 0.9%(aORは0.4;95% CI、0.2〜0.8;P=0.016)。そして患者満足度も高かった(平均±SD 0〜10ポイントスケールスコアで、9.6±1.2 vs 8.4±2.9;P<0.001)。プロペンシティを合致させた感度分析は同様であった。

・大腰筋筋溝ブロックは、穿刺関連合併症は多いが、感染合併症は少ない。

by anaesthetist | 2017-08-21 21:16 | 末梢神経ブロック | Comments(0)