人気ブログランキング | 話題のタグを見る

胃腺癌の韓国人患者の胃切除後における静脈血栓塞栓症の頻度と予防法の使用:PROTECTOR無作為化臨床試験

・全米総合癌センターネットワークと米国臨床腫瘍学会によるガイドラインでは、胃腺癌患者に対して血栓予防を日常的に使用することを推奨している。しかしながら、アジアの各国で多くの医師は静脈血栓塞栓症(VTE)の予防をそこまで使用していない、というのもこうした集団ではVTE頻度が低いとみられているからである。

・目的として、胃腺癌の韓国人患者における胃切除後VTEの頻度を評価し、VTE予防法の合併症を同定、有効性と安全性を評価した。

・韓国人患者の胃切除後静脈血栓塞栓症に対する最適な予防法(PROTECTOR)無作為化臨床試験を、2011年8月1日から2015年3月31日におこなった。組織学的に胃腺癌と確定診断されて単一の施設(ソウル聖母病院、ソウル、韓国)にかかった患者を登録した。患者を無作為に間欠的空気圧迫(IPC)のみ群か、IPCと低分子(LMW)ヘパリンナトリウム群に割り付けた。データ分析は、ITT解析とper protocol解析にしたがっておこなった。データ分析を2016年4月1日から2017年10月30日におこなった。

・静脈血栓塞栓症を主要評価項目とした。術後合併症で特にVTE予防法と関連したものを副次評価項目とした。

・研究に参加して無作為化された682人の患者のうち、447人(65.5%)が男性で245人(34.5%)が女性であり、平均(SD)年齢は57.67(12.94)歳であった。解析した666人の患者のなかで、全体のVTE頻度は2.1%であった。VTE頻度はIPCのみ群で統計学的に優位に高く、IPCとLMWヘパリンナトリウム群は低かった(3.6%;95% CI、2.05%〜6.14% vs 0.6%;95% CI、0.17%〜2.18%;P= .008)。VTEとなった14人(2.1%)のなかで、13人は無症状で深部静脈血栓症の診断で、1人は症候性の肺血栓塞栓症の診断であった。出血合併症の全体の頻度は5.1%であった。出血合併症の頻度はIPCとLMWヘパリンナトリウム群で優位に高く、IPCのみ群では低かった(9.1% vs 1.2%;P< .001)。VTEに関連した死亡の症例はなかった。

・IPCのみの使用では、術後VTEを予防するのにIPCとLMWヘパリンナトリウムの使用よりも劣っていた。LMWヘパリンは出血リスクと高く関連するため、さらなる研究で周術期VTE発症の高リスク患者を層別化する必要がある。

by anaesthetist | 2018-11-19 22:53 | 静脈血栓塞栓症 | Comments(0)