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・米国心臓学会(AHA)は最近、心血管・腎・代謝症候群(CKM)を新しく一体とみなして定義し、心臓・腎臓・代謝の複雑な相互作用に取り組もうとしている。本研究の目的として、非心臓手術をうける患者でCKM症候群が影響をおよぼす転帰を評価しようとした。

・これは前向き国際コホート研究の二次解析で、対象としたのは45歳以上で非心臓手術をうける心血管リスクの高い患者であった。主要な曝露はAHA定義によるCKM症候群とした。主要評価項目は手術後30日での主要有害心血管事象(MACE)の複合体とした。副次評価項目は全原因死亡と非MACE合併症(Clavien-Dindoクラス≧3)とした。

・本解析で対象となったのは14,634人の患者(60.8%が男性;平均年齢=72±8歳)であった。MACEがみられたのは308人の患者(2.1%)で、335人(2.3%)が死亡した。CKMステージによるMACEの頻度は次のようであった:CKM 0:5人/367人=1.4%(95%信頼区間[CI]、0.4%〜3.2%);CKM 1:3人/367人=0.8%(95% CI、0.2%〜2.4%);CKM 2:102人/7440人=1.4%(95% CI、1.1%〜1.7%);CKM 3:27人/953人=2.8%(95% CI、1.9%〜4.1%);CKM 4a:164人/5357人=3.1%(95% CI、2.6%〜3.6%);CKM 4b:7人/150人=4.7%(95% CI、1.9%〜9.4%)。多変量ロジスティック回帰分析にて、CKMステージ≧3は独立してMACE・死亡率・非MACE合併症とそれぞれ関連した(MACE:OR 2.26[95% CI、1.78〜2.87];死亡率:OR 1.42[95% CI、1.13〜1.78];非MACE合併症:OR 1.11[95% CI、1.03〜1.20])。

・新しく定義されたCKM症候群は非心臓手術後における合併症罹患と死亡の増加と関連した。従って、心血管・腎・代謝系の疾患をこうした状況下では相互に関連することを考慮すべきである。

# by anaesthetist | 2024-04-15 19:25 | 合併症 | Comments(0)

・大手術後における貧血は想定外の再入院と関連している可能性がある。しかしながら、退院時の貧血の程度と想定外再入院のリスクとの重症度-反応の関連性は明確になっていない。我々の目的として、さまざまな術式の大手術をうける患者集団において、退院時のヘモグロビン濃度と想定外の再入院リスクとの重症度-反応の関連性を詳述しようとした。

・我々がおこなった単施設での三次病院でおこなった後向きコホート研究の対象としたのは、全員の患者が大手術(整形外科・腹部・心臓・胸部)を2011年5月1日から2022年2月1日にうけた。主要評価項目は当該手術後退院して90日までの想定外の再入院とした。これらの複雑な非線形の関連性を制限付き三次スプラインでモデル化した。

・同定したのは22,134人の患者で、主要解析では14,635人が対象となり、そのうち1804人(12%)が少なくとも1回の想定外の再入院となった。想定外の再入院のオッズが増加したのは退院時のヘモグロビン濃度が100g/l未満のときだった(p<0.001)。サブグループ解析にて、再入院オッズが増加しはじめるヘモグロビン濃度下限の閾値は待機的手術とくらべて、緊急手術をうける患者で高くなるようであった(110g/l;p<0.001)。退院時のヘモグロビン濃度が下がることと想定外の再入院のオッズ比(95%CI)増加が関連していたのは、整形外科(1.08(1.01〜1.15)、p=0.03)・腹部(1.13(1.07〜1.19)、p<0.001)・胸部(1.12(1.01〜1.24)、p=0.03)の手術をうける患者であったが、心臓手術をうける患者では関連しなかった(1.09(0.99〜1.19)、p=0.07)。

・本所見から、待機的手術後のヘモグロビン濃度<100g/lと緊急手術後のヘモグロビン濃度<110g/lが大手術後の退院時にみられると、想定外の再入院と関連することが示唆された。術後貧血を治療したり想定外の再入院を減らしたりしようとする将来の介入研究では、退院時のヘモグロビン濃度がこうした閾値以下の患者を対象とすべきであろう。

# by anaesthetist | 2024-04-14 19:01 | 輸液・輸血 | Comments(0)

・この症例報告で述べるのは、術後に感覚運動不全麻痺を第6胸椎(Th6)でおこしたもので、上腹部手術に対して併用した麻酔をおこなった後で、脊髄硬膜外脂肪腫症(SEL)が胸椎に位置していた患者であった。

・当該患者は当院で膵頭十二指腸切除術での周術期鎮痛で胸部硬膜外カテーテル(TEA)を治療に使った。不全麻痺症状が出現したのは術後20時間後であった。最初のMRIで出血・感染・脊髄損傷は認められず、対診した脳神経外科医は経過観察を勧めた。神経学的診察と術後15日での3回目のフォローアップMRIにてTh6レベルでの脊髄腹側外側損傷がみられた。可能性として、既存の脂肪腫症と胸椎後弯症に加えて、局所麻酔薬が脊髄を圧迫していると思われた。不全麻痺はフォローアップの対麻痺治療中に改善した。

・これまでわずか2つの報告で、合併症なくおこなった腰椎硬膜外カテーテルによる麻酔を腰椎SELのある患者におこなったものがあった。硬膜外カテーテルによる麻酔は疼痛管理に安全で有効な方法である。しかし重要なことは、術前診察時にリスクファクターのある患者を注意深く同定して層別化する事である。後弯症と胸椎SELのある患者において、TEAはリスクと利点を評価した後にのみ使用されてもいいかもしれない。




# by anaesthetist | 2024-04-13 19:31 | 合併症 | Comments(0)

・この前向き観察研究の目的として、区域麻酔中鎮静のデクスメデトミジン(DMT)必要量に影響する予測因子を検証しようとした。

・合計108人の患者が区域麻酔を静注DMT投与下で整形外科の上肢か下肢手術に対してうけて対象となった。うまく区域麻酔を施行後、DMTを4µg/kg/時の速度で意識消失(LOC)まで投与した。LOCまでの体重あたりのDMT投与量(DMTLOC;µg/kg)を評価した。投与は術中0.2〜0.7µg/kg/時の速度で維持した。手術終了時、BISが90になるまでの経過時間(TBIS90;秒)を記録した。線形回帰モデルを使って、DMTLOCとTBIS90の予測因子を同定した。

・100人の患者が解析された。DMTLOCと年齢(r=-0.297、p=0.003)と、DMTLOCと体格指数(BMI)(r=-0.425、p<0.001)にはそれぞれ負の相関性がみられた。多線形回帰モデルによれば、高齢化とBMIが有意にDMTLOCと関連した(r²=0.259、p<0.001)が、変数のなかでTBIS90と関連があるものはなかった。

・本研究の結果から、DMTの初期投与は高齢と肥満の手術患者で注意深く調整することでリスクを最小化すべきである。




# by anaesthetist | 2024-04-12 18:53 | 薬剤・麻薬 | Comments(0)

・目的として、変化させる1回換気量による片肺換気が術中の酸素化を向上して、肺切除術後の術後肺合併症を減らす、という仮説を検証しようとした。

・固定した1回換気量と呼吸回数による換気により無気肺となることがある。動物とヒトのARDS研究によれば、酸素化が変化させる1回換気量で向上するという。片肺換気はARDSと特性を共有しているため、変化させる1回換気量による片肺換気が術中の酸素化を向上して肺切除術後の術後肺合併症を減らすという仮説を検証した。

・研究デザインは、無作為化試験であった。

・研究の場は、手術室と麻酔後回復室であった。

・患者は、成人で待機的に開胸かビデオ補助下胸腔鏡下の肺切除術を全身麻酔下でうけて、術中換気を固定した1回換気量(n=70)か変化させる1回換気量(n=70)かに無作為化して割りつけられた。

・介入として、固定された換気に割りつけられた患者は1回換気量を6ml/kg PBWとし、変化させる換気に割りつけられた患者は1回換気量を6ml/kg PBW±33%で5分ごとでランダムに変化させた。

・主要評価項目は術中の酸素化とし、副次評価項目は術後肺合併症・手術90日以内での死亡率・心拍数・SpO₂/FiO₂比とした。

・128人の患者データが解析され、65人は固定された1回換気量による換気、63人は変化させる1回換気量による換気に割りつけられた。片肺換気中の時間荷重平均PaO₂は、固定した1回換気量で換気された患者で176(86)mmHg、変化させる1回換気量で換気された患者で147(72)mmHgで、差は統計学的に有意(p<0.01)であったが、事前設定した臨床的有意閾値である50mmHgよりも小さかった。少なくともひとつの複合的な合併症がみられたのは、変化させる1回換気量で換気された患者で11人(17%)、固定した1回換気量に割りつけられた患者で17人(26%)で、相対リスクは0.67(95% CI 0.34〜1.31、p=0.24)であった。換気肺での無気肺は術後最初3日間で変化させる1回換気量(4.7%)の方が固定した1回換気量(20%)よりも少なく、相対リスクは0.24(95% CI 0.01〜0.8、p=0.02)であったが、遅い術後日数で有意差はなかった。他の副次評価項目で統計学的な有意差や臨床的な有意差はともになかった。


# by anaesthetist | 2024-04-11 19:17 | 肺換気・片肺換気 | Comments(0)