・妊娠期間中における母体バイタイルサインと検査値の生理学的調節の影響はまだ完全に定義されていない。この研究のデザインとして、周産期の健康な妊産婦におけるこうした変数の正常範囲を検証した。

・この後向き分析でデータは、単施設の医療センターでリアルタイムの分娩中に集めた。バイタルサインと検査値は分娩室入室前の24時間から産後72時間までを集めた。対象とした妊産婦は、満期産で(37〜41週の妊娠期間)元気に出生した単胎妊娠で、研究の生理学的変数に影響をおよぼしそうな慢性疾患や産科合併症のないものだけを含めた。変数全ての極値の平均値・範囲・標準偏差を3つの異なったポイント(陣痛前・分娩中・産後)に計算した。それぞれの変数の2.5パーセンタイルと97.5パーセンタイルを正常範囲として報告した。

・合計32,161人の症例が算入基準を満たした。分娩時の平均妊娠週数は39週±8日で、症例の3分の1は初産であった。陣痛中と分娩後における、正常血圧の上限値はそれぞれ、147/94と145/94mmHgであった。下限値はそれぞれ、83/43と84/42mmHgであった。正常心拍数は、陣痛前で60〜115拍/分、分娩中で51〜120拍/分、分娩後で50〜120拍/分であった。正常体温の最低値は3つの研究時点で36.0℃から36.3℃の範囲で、正常体温の最高値は、陣痛前で37.2℃、分娩中と分娩後で37.6℃であった。白血球数の正常範囲は、陣痛前で6.1〜16.8 K/μL、分娩中で6.5〜22.5 K/μL、分娩後で6.4〜23.9 K/μLであった。ヘモグロビンの正常下限値はそれぞれ、9.7・8.7・7.1 g/dLで、血小板下限値はそれぞれ、117・113・105 K/μLであった。

・我々の所見から、妊娠高血圧を診断するには2回以上の測定値を用いるという臨床行為が実証された。より低い正常血圧値が低血圧ショックを定義する値よりも下回る可能性がある。正常心拍数はこれまで受け入れられていた、頻脈と徐脈の定義を超えている。正常体温はどの時点でもこれまで考えられてきたよりも狭い範囲で、白血球数の正常範囲はどの時点でも現在の白血球増多や白血球減少の定義を超えた異常値がある。ヘモグロビンの正常下限値は通常10g/dL未満で、正常血小板値はこれまで言われていたよりも相当低いものだった。したがって、バイタルサインと全血算は周産期にこれまで正常と考えられていたものよりも離れており、調整が必要である。低血圧・頻脈/徐脈・発熱・白血球数の量的な疾患の新しい定義を考慮する必要がある。

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# by anaesthetist | 2018-11-18 22:42 | 妊娠合併症 | Comments(0)

・術後肺炎は合併症・死亡・費用の増加と関連する。いま利用できる肺炎の予測モデルは後向きに集めたデータと入院管理コードシステムに基づいている。

・目的として、術後肺炎発症と関連する独立した変数を同定しようとした。

・研究デザインは、多施設集団の前向き観察研究(欧州データベースにおける術後肺合併症リスクスコアの前向き評価)であった。

・研究施設としては、欧州の63の病院であった。

・患者は、7日の募集期間で全身麻酔あるいは区域麻酔で手術をうけた。

・主要評価項目は、術後肺炎とした。

・術後肺炎の定義として、呼吸器感染症として抗生物質による治療が必要であり、少なくとも以下の規準を1つ満たした:新しい、もしくは変化した喀痰;胸部レントゲン写真で臨床的に指摘される、新しい、もしくは変化した肺野透過性;38.3℃以上の体温;12000/μl以上の白血球。

・術後肺炎を発症したのは、5094人の患者のうち120人(2.4%)であった。肺炎患者120人のうち82人(68.3%)がICU入室が必要となり、それとくらべて肺炎のない患者4974人のうちICU入室となったのは399人であった(P<0.001)。我々は術後肺炎と独立して関連する5つの変数を同定した:機能状態[オッズ比(OR) 2.28、95%信頼区間(CI) 1.58〜3.12]・室内気で呼吸している際の術前SpO2値[OR 0.83、95% CI 0.78〜0.84]・術中膠質液投与[OR 2.97、95% CI 1.94〜3.99]・術中輸血[OR 2.19、95% CI 1.41〜4.71]・手術部位[開腹手術でOR 3.98、95% CI 2.19〜7.59]。このモデルには良好な判別力(c統計量 0.89)と適合度がよく較正されている(ホスマー・レメショウ検定のP=0.572)。

・術後肺炎と独立して関連する5つの変数を同定した。このモデルはよく適合し、外部の妥当性をみれば術後肺炎リスク患者をリスク分類して管理するのに用いられるだろう。




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# by anaesthetist | 2018-11-17 23:38 | 術前・術後管理 | Comments(0)

・著者らが最近示したことだが、術中の目標指向型輸液療法の一部としてバランスの取れたヒドロキシエチルデンプン(HES)液を投与すると、主要な開腹手術をうける患者においてバランスの取れた晶質液の投与よりも良好な短期的予後と関連する。この研究では、これらの患者における1年フォローアップした腎機能予後と障害予後を検証した。

・初期の研究に参加した患者は全員、手術後1年のフォローアップで腎機能と障害程度を世界保健機構障害評価尺度(WHODAS)2.0を使って評価した。主要評価項目は、推定糸球体濾過率とした。他の評価項目は、血清クレアチニン・尿素・掻痒・WHODASスコアであった。群間を完全ケース分析に基づいて比較し、最新の補完法を混合モデルによる回帰分析に用いて、欠損値を考慮した所見の安定性を評価した。

・最初の研究に参加した160人の患者のうち、フォローアップデータを得られたのは腎機能で129人とWHODASスコアで114人であった。1年における推定糸球体濾過率は統計学的に有意差はなかった(ml/分/1.73㎡):晶質液では80[65〜92] vs. 膠質液では74[64〜94];95% CI[-10〜 -7]、P=0.624。しかしながら、WHODASスコア(%)は晶質液群よりも膠質液群で統計学的に優位に低く(2.7[0〜12] vs. 7.6[1.3〜18];P=0.015)、無障害生存期間は長かった(79% vs. 60%;95% CI[2〜39];P=0.024)。

・主要な開腹手術をうけた患者において、術中の目標指向型輸液療法の一部としてバランスの取れたヒドロキシエチルデンプン液とバランスの取れた晶質液で、長期的な腎機能に統計学的に有意差があるというエビデンスはなかったが、臨床的な有意差を除外できるほど検出力はなく限られていた。しかしながら、無障害生存期間は晶質液群よりも膠質液群で優位に長かった。

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# by anaesthetist | 2018-11-16 22:45 | 輸液・輸血 | Comments(0)

・抗うつ薬や抗不安薬を内服している患者は複雑な周術期を経過することがよくあり、これは疼痛管理が困難であったり、心理的に対処機構が変容してしまったり、薬剤関連事象がおきたりするためである。この研究では、交絡変数を統制した上で抗うつ薬や抗不安薬が術後入院日数におよぼす関連性を検証した。

・2011年から2014年に単施設の大きな都市部にある大学病院施設で非心臓手術をうけた48,435人の成人患者の入院管理データから、多変数のゼロ切断した2項回帰分析を年齢・性別・内科的合併症・術式で統制しておこない、術前に抗うつ薬や抗不安薬に暴露することが術後入院日数と関連するかどうかを評価した。

・抗うつ薬を内服している患者が5111人(10.5%)と抗不安薬を内服している患者が4912人(10.1%)いた。入院日数の中央値は3日(四分位範囲=2〜6)であった。交絡変数で統制したあと、術前抗うつ薬の内服は入院日数の増加と増加率が1.04で関連し(99%信頼区間、1.0〜1.08、P< .001)、抗不安薬の内服は増加率が1.1で関連した(99%信頼区間、1.06〜1.14、P< .001)。

・抗うつ薬や抗不安薬の内服と術後入院日数増加の関連性によれば、こうした患者では周術期に回復を早めるように細心の注意を払う必要があり、そこでは術前カウンセリング・術後精神科コンサルト・統合的な回復アプローチを合わせて、術後回復プロトコルを向上させていくことである。




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# by anaesthetist | 2018-11-15 22:23 | 術前・術後管理 | Comments(0)

・ケタミンは麻酔域下用量で抗うつ効果をもつ全身麻酔薬である。我々の仮説として、術中のケタミン投与が手術患者の術後うつ症状を予防または軽減する、とした。

・我々のおこなった国際無作為化臨床試験では、術中ケタミン投与[0.5mg/kg(Lo-K)か1.0mg/kg(Hi-K)]と対照[生食プラシーボ(P)]を全身麻酔下で主要手術をうけた60歳以上の患者を比較検証した。患者健康質問票-8(PHQ-8)を術前・術後(POD)3日(主要評価項目)・POD30におこなって、うつ症状を評価し、最初の試験の副次評価項目とした。

・POD3でうつを示唆する症状を呈した患者の割合は、プラシーボ群[23/156(14.7%)]とケタミン群を合わせたもの(Lo-K+Hi-K)[61/349(17.5%)]で有意差はなかった[差= -2.7%;95%信頼区間(CI)、5.0%〜 -9.4%;P=0.446]。全集団のなかで、9.6%(64/670;95% CI、7.6〜12.0%)が術前にうつ症状をもち、POD3で16.6%(84/505;95% CI、13.6〜20.1%)に増加し、POD30で11.9%(47/395;95% CI、9.1〜15.5%)に減少した。POD3とPOD30でうつ症状のあった患者のうち、それぞれ51%と49%が、うつ病やうつ症状の既往がなかった。

・主要手術は60歳以上の患者で新規うつ症状と関連した。麻酔域下での術中ケタミン投与はうつ症状を予防または改善しないようである。

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# by anaesthetist | 2018-11-14 22:55 | 薬剤・麻薬 | Comments(0)