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・低血圧は帝王切開での脊髄くも膜下麻酔でよくみられる。予防戦略として輸液負荷とフェニレフリンがある。我々の仮説として、予防的フェニレフリン投与をした場合に輸液負荷をしないことが心拍出量を維持するのに輸液同時負荷と非劣性である、とした。仮定として、差があるとしたら心拍出量の増大は非負荷群の方が同時負荷群よりも大きいとした。

・待機的帝王切開を予定された満期産の妊娠女性を無作為化して、1Lの晶質液同時負荷か維持輸液のみを投与するようにした。フェニレフリンを調節して血圧を維持した。脊髄くも膜下麻酔後の心拍出量の変化を主要評価項目とした。本研究が非劣性試験としてパワーをもつのであれば、非負荷群が心拍出量の変化が50%大きくなるだろう。心拍数・フェニレフリン投与量・嘔気嘔吐の頻度・アプガースコア・新生児の酸塩基状態を副次評価項目とした。

・63人の女性データを解析した。我々の仮説に反して、非負荷群で心拍出量は33%減少し(比 0.67、95% CI 0.15〜1.36)、非負荷群で心拍出量は60%の大きな減少となった(比 1.6、95% CI 1.0〜2.7)。フェニレフリンの総投与量は非負荷群でより多かった。輸液負荷がないと新生児の酸塩基状態は好ましくないようであった。

・晶質液の同時負荷をしないと心拍出量の減少をきたし、新生児の酸塩基状態に好ましくない影響をおよぼす可能性があった。結論として、晶質液の同時負荷はフェニレフリン投与中に役立つだろう。




# by anaesthetist | 2024-03-18 19:25 | 帝王切開 | Comments(0)

・デキサメタゾンとデクスメデトミジンはともに末梢神経ブロックの鎮痛時間を延長させる。著者らの仮説として、静注デキサメタゾンと静注デクスメデトミジンの併用によって静注デキサメタゾンのみやプラシーボとくらべて鎮痛時間が大きく延長する、とした。

・著者らは足手術や足関節手術を全身麻酔に膝下(坐骨)神経ブロックと伏在神経ブロック下でうける患者を無作為化して、デキサメタゾン12mgとデクスメデトミジン1µg/kgの併用か、デキサメタゾン12mgか、プラシーボ(生食)に割りつけた。主要評価項目は鎮痛時間として、ブロック施行から患者の報告によって手術部位で疼痛を最初に自覚するまでの時間で測定した。著者らは事前設定として、鎮痛時間の33%の差を臨床的に有意とした。

・2施設から合計120人の患者が無作為化されて、119人が主要評価項目の対象となった。鎮痛時間のの中央値[IQR]はデキサメタゾンとデクスメデトミジンの併用で1572分[1259〜1715]、デキサメタゾンのみで1400分[1133〜1750]、プラシーボで870分[748〜1138]であった。プラシーボとくらべて、鎮痛時間はデキサメタゾンとデクスメデトミジンの併用(差 564分、98.33% CI 301〜794、p<0.001)と、デキサメタゾン(差 489分、98.33% CI 265〜706、p<0.001)で長くなった。延長時間は事前設定による臨床的有意差を超えた。鎮痛時間はデキサメタゾンとデクスメデトミジンの併用をデキサメタゾンのみとくらべると同等であった(差 61分、98.33% CI -222〜331、p=0.614)。

・デキサメタゾンはデクスメデトミジンの有無によらず、足手術や足関節手術を膝下(坐骨)神経ブロックと伏在神経ブロックでうける患者の鎮痛時間を延長した。デキサメタゾンとデクスメデトミジンの併用はデキサメタゾンとくらべて、鎮痛時間を延長しなかった。




# by anaesthetist | 2024-03-17 19:35 | 末梢神経ブロック | Comments(0)

・目的として、大きな非心臓手術後における術後ヘモグロビンと死亡率や、虚血や不十分な酸素供給を反映する合併症との性別特異的な相関性を検証しようとした。

・研究デザインは、先だった妥当性評価をともなった後向きコホート研究であった。

・研究の場は、中国の大規模大学病院健康システムであった。

・患者は、男性と女性で待機的に大きな非心臓手術をうけた。

・主要曝露は術後48時間以内でのヘモグロビン最低値とした。評価項目は術後死亡や虚血性事象で入院中の心筋梗塞・急性腎障害・脳梗塞などの複合体とした。

・本研究で対象となったのは26,049人の患者(15,757人の男性と10,292人の女性)であった。低い術後ヘモグロビンは両性とも複合転帰の強い予測因子であり、ヘモグロビン最低値が男性で130g/lと女性で120g/lを下回るとリスクは徐々に増加した(術後ヘモグロビン最低値が10g/l低下するごとに、男性で調整オッズ比[OR] 1.43、95% CI 1.37〜1.50、女性でOR 1.45、95% CI 1.35〜1.55)。これら性別特異的な閾値上では、ヘモグロビン最低値の変化は男性でも女性でも複合転帰のオッズと関連しなかった。患者の性別と、術後ヘモグロビンと複合転帰の関連性とで有意な相互作用はなかった(P相互作用=0.673)。外部の前向き集団(n=2120)で系統的な術後トロポニンとクレアチニンの測定値による妥当性で我々の所見は確認された。

・大きな非心臓手術後における術後ヘモグロビン値は虚血性合併症や死亡と非線形に関連したものの、臨床的に重大な患者の性別との相互作用はなかった。




# by anaesthetist | 2024-03-16 19:39 | 合併症 | Comments(0)

・亜酸化窒素(N₂O)は全身麻酔によくみられる補助薬である。これは温室効果ガスでもあってオゾン層破壊を引きおこす。我々は、全身麻酔の補助薬としてのN₂Oが術後患者転帰におよぼす影響を定量化しようとした。

・Medliine・EMBASE・Cochrane Centralを検索して創刊から2023年7月6日までに発表された論文を対象とした。全身麻酔へのN₂Oの有無で比較したRCTsを対象とした。リスク比(RRs)と標準化平均差(SMDs)を計算し、95%信頼区間を併用してランダム効果モデルを使った。転帰は周術期医療のための標準化評価項目(StEP)転帰セットから抽出した。主要評価項目は死亡率と臓器関連合併症罹患とし、副次評価項目は麻酔と手術による合併症罹患とした。

・3305の記録のうち、179の全文論文が評価され、71のRCTsで合計22,147人の患者がメタ解析の対象となった。全身麻酔にN₂Oを併用しても術後死亡率や大半の合併症罹患転帰に影響をおよぼさなかった。N₂Oは無気肺(RR 1.62、95% CI 1.24〜2.12)と術後嘔気嘔吐(RR 1.27、95% CI 1.15〜1.40)の頻度を増加させ、術中オピオイド消費量(SMD -0.19、95% CI -0.35〜 -0.04)と抜管までの時間(MD -2.17分、95% CI -3.32〜 -1.03分)を減少させた。

・N₂Oは術後死亡率や大半の合併症罹患に影響しなかった。N₂Oの環境への影響を考慮すると、これらの所見から現在のN₂O使用制限という推奨は患者安全性に影響しないと確定できる。

# by anaesthetist | 2024-03-15 19:38 | 薬剤・麻薬 | Comments(0)

・目的として、超音波ガイド下胸部傍脊椎ブロック(TPVB)を静脈鎮痛(PCIA)と併用した際の利点をビデオ補助下胸部手術(VATS)での術後嘔気嘔吐(PONV)を緩和する点で探索しようとした。

・VATSをうける肺癌患者120人が対象となって3群に分けた:S群(単回TPVB+PCIA)・I群(間欠的TPVB+PCIA)・P群(PCIA)。患者のNRSスコア・術後ヒドロモルフォン塩酸塩の消費量・ブシナジン塩酸塩の筋注を記録した。PONVの頻度と合併症を記載した。

・P群とくらべて、I群とS群は術後1〜48時間での安静時NRSスコアが有意に低く(P<0.05)、術後1〜48時間でのI群の動作時NRSスコアは有意に減少した(P<0.05)。P群とくらべて、I群でPONVとなった患者の割合は有意に低い(P<0.05)一方で、S群では有意差はなかった。さらに、I群の患者の入院日数は他の2群とくらべて有意に短く(P<0.01)、患者満足度はP群とくらべて有意に高かった(P<0.05)。

・間欠的TPVBをPCIAと併用すると、術後疼痛とPONVの頻度が減るだろう。

# by anaesthetist | 2024-03-14 19:26 | 末梢神経ブロック | Comments(0)