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・本研究の目的として、全身静脈麻酔と併用する吸入麻酔が頸動脈内膜剥離術(CEA)中の局所酸素飽和度(rSO₂)と脳血行動態におよぼす影響を検証しようとした。術中の脳保護戦略を最適化することがCEA研究では重要な焦点となる。

・54人の患者(43人の男性、11人の女性、年齢44〜80)が片側CEAをうけ、無作為化されてIVA群(静脈麻酔)かCIA群(併用吸入麻酔)に割りつけられ、27人の患者ずつであった。IVA群はプロポフォールとレミフェンタニルで維持され、CIA群ではセボフルラン・プロポフォール・レミフェンタニルを使い、頸動脈が曝露されたあとにセボフルランは中止した。血行動態の管理はさまざまな段階でおこなわれた:クランプ前は±10%、クランプ中は+20%(メタラミノール)、曝露後は0〜 -10%。HR・MAP・rSO₂をT0(導入前)・T1(クランプ前)・.T2(クランプ後)・T3(クランプ後5分)・T4(クランプ後10分)・T5(クランプ後15分)・T6(再灌流後15分)に記録した。血液採取を血液ガスとS100-β解析のためにT1・T6・T7(術後24時間)にておこなった。

・rSO₂はT0とT6で有意差はみられなかった(P >0.05)。しかしながら、CIA群ではT1・T2・T3・T4・T5のrScO₂が有意により大きかった(P <0.05)。T2からT5までrSO₂は両軍で増加した(P<0.05)。MAPとHRは有意差がなかった。ΔrSO₂はCIA群の方がより大きく増加した(P<0.05)。T6において、S100-β蛋白がIVA群でより高く(P=0.016)、pHはT1で有意差がみられた(P=0.009)。他に有意差がみられたものはなかった。

・静脈麻酔と併用する吸入麻酔はどちらもCEAでの一時的なクランプ中のrSO₂低下を減少させる可能性がある。併用する吸入麻酔はrSO₂をより高くする傾向がみられて良好な転帰につながる可能性があるが、さらなる研究がこうした所見を確認するには必要である。




# by anaesthetist | 2025-02-17 19:07 | 脳灌流・脳圧 | Comments(0)

・疼痛は妊娠中によくみられるが、妊娠中におけるオピオイド利用の現代での研究はほとんどない。我々の目的として、4つの地域での妊娠中における処方箋の鎮痛オピオイド使用を詳述しようとした:オセアニア[ニューサウスウェールズ(オーストラリア)]、ニュージーランド]・北アメリカ[オンタリオ(カナダ]、米国(US)]・北ヨーロッパ[デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、英国(UK)]・東アジア[香港、韓国、台湾]。

・一般的なプロトコルを集団ベースのデータにあてはめて、2000〜2020年の生誕前の妊娠中における鎮痛オピオイド調剤や処方を計測した。取り込まれた集団は米国の公的および私的な保険加入者・英国でのプライマリケア診療での一例・残りの地域での全集団であった。少なくとも1回の調剤や処方と定義した使用割合を検証し、時間経過とともに傾向を推測した。社会背景特性や妊娠状況の特性で使用状況を詳述した。

・合計20,306,228例の妊娠うち、1,115,853例(1000例中55例)が少なくとも1回の鎮痛オピオイド調剤や処方をうけて、英国では1000例中4例から米国の公的保険集団では1000例中191例であった。香港で最も大きな割合の相対的な減少がみられ(2005年と2020年で割合比 0.2;95% CI 0.1〜0.2)、アイスランドで最も大きな増加がみられた(2004年と2017年で割合比 4.4;95% CI 3.7〜5.2)。コデインとトラマドールが大半の集団で最もよく使用されたオピオイドのうち3つに含まれた。オピオイド使用を2つ以上のオピオイド調剤や処方の事象と定義した感度分析によれば、集団でのオピオイド使用の割合は1000件中17件であった。

・この大規模多国研究にて、妊娠中における鎮痛オピオイド使用の割合は世界的に大きなばらつきがあることがわかったが、社会背景特性や妊娠特性による使用パターンは比較的一貫していた。鎮痛オピオイド使用は大半の国において時間経過とともに一定か減少傾向にあるが、全ての国ではなかった。




# by anaesthetist | 2025-02-16 19:22 | 薬剤・麻薬 | Comments(0)

・慢性術後鼠径部痛(CPIP)は鼠径部のヘルニア手術で最もよくみられる合併症である。患者の特性・鼠径部痛の治療・診断ツールの選択を定義して、予防的および治療的な介入を最適化する必要がある。

・2018年と1年フォローアップの請求データを頻度と治療のために解析した。別々の集団(141人の健康な対照と17人のCPIP患者)をさまざまな表現型で検証した。そこで使用したのは感覚検査・血液検査や皮膚生検・後根神経節(DRG)のMRI・患者報告転帰であった。

・同定された2018年のヘルニア手術患者11,221人のうち、8.5%で手術前から疼痛があって手術で緩和したが、同数の割合でこの領域に新たな疼痛をみとめた。141人の健康な対照によるディープ表現型検査にて鼠径部の感覚系地図ができた。CPIP患者による次のような解析によれば、神経障害性疼痛の特性のある中等度の疼痛・個々の感覚異常・片側の第1腰椎DRG萎縮に苦しんでいた。血液検査では、C-C-モチーフケモリガンド(CCL2)や脳由来神経栄養因子(BDNF)の値が増加していた一方、アポリポ蛋白A1(ApoA1)濃度が減少していた。DRG萎縮・BDNF・ApoA1・不安がCPIPの診断と最も相関した。新たな疼痛のあるCPIP患者は有意にDRG萎縮がより大きかった(反対側容量とくらべて同側が-24%)。

・CPIPは術後に新規で発症することがよくある。DRG画像・血清マーカー・不安スクリーニングを併用することで診断の手助けとなりうる。将来、これでもっと個別化された治療(例えば、不安や脂質系を目的とする)や手術の変更となりうることに関して医師らへの指針となるであろう。




# by anaesthetist | 2025-02-15 19:53 | ペインクリニック | Comments(0)

・複合性局所疼痛症候群(CRPS)は衰弱性で疼痛性の疾患で、感覚・自律神経・栄養・運動の異常をともなう。CRPSは一般集団ではまれであるが、高リスク患者、特に外傷後や手術後の患者における有病率は不明なままである。本研究の目的として、高リスク群におけるCRPSの有病率を同定する基準を提示し、CRPSを発症する可能性がある予測因子に関する洞察を提供しようとした。

・系統的レビューとメタ解析をおこなって起因する事象(例えば、骨折や手術)後におけるCRPSの有病率、特に12ヶ月と24ヶ月での有病率(主要評価項目)に加えて、3ヶ月と6ヶ月での有病率(副次評価項目)を報告した研究を同定しようとした、個々の研究からの推測を二重逆正弦変換し、95%信頼区間(CI)による結果の推測値をランダム効果モデルによるメタ解析で統合した。

・対象とした214の論文で世界中から2,491,378人の患者(35カ国)からのデータがあつまり、そのうち16,873人がCRPSとなった。統合された12ヶ月と24ヶ月での世界的な有病率それぞれ、3.04%(95% CI、2.64〜3.48)と6.46%(95% CI、5.46〜7.53)であった。サブグループ解析とメタ回帰をおこなって、集団依存(障害機序やCRPS型)・患者背景依存(社会経済状況)・方法論依存(研究デザインや発表年)による因子の影響を解明しようとした。12ヶ月での有病率は、人間開発指数(HDI)の高い国の方がHDIが中等度や非常に高い国とくらべて高く、外傷のみを起因とする患者の方が手術のみや外傷/手術を起因とするよりも高く、前向き研究の方が後向き研究よりも高かった。メタ回帰分析によれば、発表年は有意な修飾因子で、より最近の論文の方が12ヶ月での有病率をより低く報告していた。

・本研究では世界的なCRPSの有病率の基準を提示し、麻酔科医や疼痛専門家は早期診断に優先順位をつけてCRPSの最も高いリスク患者を同定するの使用することができるであろう。




# by anaesthetist | 2025-02-14 18:59 | ペインクリニック | Comments(0)

・反跳痛は末梢神経ブロックの効果が少なくなったあとに激しい疼痛や不快感を特徴とするが、依然として臨床上の問題である。周術期のデキサメタゾン投与が反跳痛の頻度を下げる可能性がある。この系統的およびネットワークメタ解析の目的として、反跳痛予防に対する最適なデキサメタゾン投与経路を検証しようとした。

・事前に設定した基準にしたがって無作為化比較試験のデータベースを検索した。末梢神経ブロックの補助として静注と神経周囲でのデキサメタゾンを、共通比較対象としての対照群と比較した。主要評価項目は反跳痛の頻度とした。ある介入が最高となる可能性を累積順位曲線下面積を使って計算した。

・合計で14の研究と1058人の患者が対象となった。比較対象と比べて、静注デキサメタゾンが最高位となり、1000人あたり反跳痛が298例少なくなる効果があると推測されたことがわかった(オッズ比(OR) (95%信用区間(Crl) 0.12(0.03〜0.44));中等度の確実性エビデンス)。これに神経周囲デキサメタゾンが続き、1000人あたり反跳痛が190例少なくなる効果があると推測された(OR (95%Crl) 0.34(0.07〜1.32);低い確実性エビデンス)。投与経路と反跳痛発症までの時間に影響するエビデンスはなかった。

・静注デキサメタゾンは末梢神経ブロック後の反跳痛の頻度減少の高い確率と関連した。これは中等度の確実性エビデンスに基づいていた。最適な投与量を同定する将来の研究がいまもとめられる。




# by anaesthetist | 2025-02-13 19:05 | 末梢神経ブロック | Comments(0)