人気ブログランキング | 話題のタグを見る

単回くも膜下モルヒネ投与による無痛分娩時間の延長:系統的レビュー

・ブピバカインとフェンタニルあるいはスフェンタニルによる単回投与くも膜下脊髄麻酔は分娩中の鎮痛によく使われているが、短時間作用ということで臨床的な妥当性を制限している。さまざまな薬物が添加され、鎮痛時間を延長させてきた。くも膜下腔へのモルヒネ追加投与効果が手術後だけでなく分娩中の疼痛でも研究されてきた。ここで評価したのは、ブピバカイン+フェンタニルあるいはスフェンタニルによるくも膜下脊髄麻酔にモルヒネを加えることで、分娩中の疼痛緩和を延長させるかどうか、であった。

・ブピバカイン+フェンタニルあるいはスフェンタニルに加えて、分娩中に単回投与のくも膜下腔への250µg以下のモルヒネ投与で、鎮痛時間延長のプラシーボ比較無作為化臨床試験のメタ分析をおこなった。461の参考文献を同定した後、24の基準を満たした研究を評価したが、複製出版物・症例報告・帝王切開後鎮痛の研究・硬膜外無痛分娩は除外した。平均無痛時間(分)が主要評価項目であり、標準化平均差の計算に含まれた。無痛時間の定義は、くも膜下脊髄くも膜下麻酔の単回投与からレスキュー鎮痛薬を患者が要求するまで、とした。全ての報告された副作用が登録された。個々の試験結果がランダム効果モデルを使って統合された。コクランツールを使って、バイアスリスクを評価した。

・5つの無作為化プラシーボ比較臨床試験(286人の患者)がメタ分析に含まれた。50〜250µgのくも膜下腔モルヒネ投与量で、平均60.6分(3〜155分の範囲)無痛時間を延長させた。モルヒネを加えることで中等度の有益性がみられ、これは標準化平均差=0.57(95% CI:-0.10 〜 1.24)のプールされた効果で、高い異質性(I2=88.1%)をもつものであった。しかしながら、ここでみられた有益性は統計的に有意ではなかった(z=1.66、p=0.096)。バイアスのより低い試験が示すところでは、統計的に有意でない小さな有益性がみられるだけで、異質性も低かった。影響解析で、メタ分析からある研究を一度、除外すると、効果量は不安定となり、その結果は効果の頑健性を持たなかった。効果量が最も高い研究を省くとプールされた効果を極端に減少させ、その研究は治療割りつけや盲検化が不十分なことに苦しむことになる。試験の質が全般的に低くなると、集まる試験が少なくなってメタ回帰分析や層別解析において異質性の源を見つけることができなくなる。一般的に、メタ分析を少ない数の研究でおこなうことが可能だが、その限界に気付いておくと助けとなる可能性がある。プラシーボ比較試験がふえればふえるほど、その信頼性は大きく増すことになる。

・この系統的レビューのエビデンスによれば、分娩中のブピバカイン+フェンタニルあるいはスフェンタニルによる脊髄くも膜下麻酔にモルヒネを加えることで、有益に効果を延長させるだろう。これらの研究の質は低く、異質性は高かった。重大な副作用は報告されなかった。バイアスの低い、もっとパワーのある無作為化試験を集めることで、分娩中の脊髄くも膜下麻酔による鎮痛にモルヒネを加える際の有益性と有害性を見極めることができる。

・硬膜外鎮痛が、分娩中の疼痛緩和をはかるのに最も有効な方法と記載されているが、地球規模でみた場合、分娩中の大半の女性は硬膜外鎮痛へアクセスできない。低用量のブピバカイン、フェンタニルあるいはスフェンタニルの単回投与脊髄くも膜下麻酔へモルヒネを加えることは有効であろうが、調査は必要である。

by anaesthetist | 2017-09-02 22:31 | 無痛分娩 | Comments(0)