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乳癌手術に対する全静脈麻酔と吸入麻酔の比較:後向きコホート研究

・用いられた麻酔方法と悪性腫瘍再発との関連性は議論の余地がある。この後向きコホート研究では、全静脈麻酔と吸入麻酔が乳癌手術後の無再発生存期間という主要評価項目におよぼす影響を比較した。

・著者らは電子診療録を再調査し、三次医療教育病院で2005年1月から2013年12月に乳癌手術をうけた患者を対象とした。患者を手術で用いられた静脈麻酔か吸入麻酔にしたがって分けた。傾向スコアマッチングを使って、ベースライン背景の差を考慮した。カプラン・マイヤー生存曲線をつくって、麻酔方法が無再発生存期間と全生存期間におよぼす影響を評価した。悪性腫瘍再発と全原因死亡のリスクを麻酔方法ごとに比較した。

・研究期間中に乳癌手術をうけた7,678人の患者のうち、5,331人の患者データが分析に利用できた(静脈群、n=3,085;吸入群、n=2,246)。傾向スコアマッチング後、1,766人の患者が各群に残った。カプラン・マイヤー生存曲線によれば、2群間で無再発生存期間や全生存期間に有意差はなく、5年無再発生存率は静脈群で93.2%(95% CI、91.9〜94.5)と吸入群で93.8%(95% CI、92.6〜95.1)であった。吸入麻酔は全静脈麻酔とくらべて、無再発生存期間(ハザード比、0.96;95% CI、0.69〜1.32;P=0.782)や全生存期間(ハザード比、0.96;95% CI、0.69〜1.33;P=0.805)に優位な影響をおよぼさなかった。

・著者らは用いられた麻酔方法と乳癌長期予後の関連性を見いだせなかった。この後向きコホート研究の結果から、乳癌手術に対して静脈麻酔か吸入麻酔を特別に選択することは推奨されない。




by anaesthetist | 2018-11-02 19:19 | 悪性腫瘍 | Comments(0)