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脊椎手術中の眼損傷

・眼損傷や失明はまれな手術合併症である。脊椎手術は術後失明の特別に高いリスクとみられている;それにもかかわらず、眼損傷はこうした患者集団で包括的に評価されてこなかった。

・この後向きコホート研究で評価したのは、ある三次医療センターで2006年1月1日から2018年1月31日までにうけた脊椎手術後におこった周術期眼損傷の頻度・原因・リスクファクターであった。対象となったのは、術後最初7日までに眼科コンサルタントによって同定された眼損傷となった患者である。眼損傷となった患者とならなかった患者での背景・検査データ・術中と術後の特性に関しての差異を、カテゴリー変数と連続変数に対してそれぞれ、フィッシャー正確検定とウィルコクソン符号順位検定で評価した。

・基準を満たした脊椎手術20,128例のうち、周術期眼損傷は39例が同定された(30/20,128;0.19%[95%信頼区間(CI)、0.14〜0.26])。最も頻繁にみられた眼損傷は原因の分からない霧視(13/39;33%;95% CI、18.6〜46.4)で、続けて虚血性視神経症(9/39;23%;95% CI、12.6〜38.3)・角膜剥離(7/39;18%;95% CI、9.0〜32.7)であった。原因の分からない霧視の症例はすべて、眼科コンサルタントにて診断され、数日以内に回復した。周術期眼損傷となった患者は、ベースラインで貧血、人工物などを使った固定術をうけ、手術時間が長時間となり多くの晶質液・膠質液・輸血が必要となり、出血も多かった、といった可能性が高かった。

・因果関係を示すことができなかったが、こうしたデータによれば、手術因子は患者背景特性や他の臨床因子よりも周術期眼損傷の発症に大きな影響をおよぼすだろう。外科医・麻酔科医・患者が、長時間におよぶ拡大脊椎手術をすると眼損傷リスクの増加がともなうことに気をつけなければならない。




Commented by 場末麻酔科医 at 2019-02-27 11:52 x
いつも本当に勉強になります。ありがとうございます。
by anaesthetist | 2019-02-26 23:55 | 体位 | Comments(1)