人気ブログランキング | 話題のタグを見る

トラマドール関連幻覚:病態生理・診断・治療の系統的レビューと記述的統合

・最近の処方傾向としては、米国とカナダでおこなわれている政府主導の取り組みを反映してオピオイド消費が減少している。こうした供給状態が反映しているのは、トラマドールを好んで使い、多くの力価の強いオピオイド使用が減少していることである。他のオピオイドよりもトラマドールが優れているという利点にも関わらず、トラマドール関連幻覚(TAH)についてはほとんど知られていないままである。

・我々は系統的文献検索をEmbase・Medline・Cochrane CENTRAL・CINAHL・PubMed・Scopus・PAHO Virtual Health Library・MedNar・clinicalTrials.govでおこない、トラマドール使用と関連した幻覚の症例報告を見つけようとした。トラマドール使用による幻覚についてのすべての症例報告に対応して、患者背景・内科管理・幻覚の詳細に関するデータを抽出した。症例の分類を、幻覚とトラマドール使用の関連性をエビデンスが支持するなら『おそらくTAH』とし、幻覚はトラマドール使用に寄与するがそれを支持するエビデンスが弱いなら『もしかするとTAH』とした。『おそらくTAH』の症例はさらに分類して、幻覚が主要な訴えなら『確立したTAH』とし、共存する症状や徴候が既存の内科疾患の診断に関わっているのなら『他の既存内科疾患』とした。それから、利用できる文献の記述的統合をおこない、こうした所見を状況に応じてあてはめた。

・合計で941の文献が最初の検索で同定された。系統的レビューで同定された観察研究や無作為化臨床試験はなかった;症例報告のみが見つけられた。徹底的なスクリーニングにより、101人からなる34の文献でトラマドール使用と幻覚の関連性が報告された。これら101症例のなかで、31が『おそらくTAH』で、70が『もしかするとTAH』であった。『おそらくTAH』の31症例のうち、16症例が『確立したTAH』で、残りの15症例が『他の既存内科疾患』であった。

・トラマドール関連幻覚により、聴覚や視覚の錯乱になる可能性があるものの、多系統におよぶ感覚の症状も報告されている。TAHの根底にある機序はよく理解されておらず、数多くの受容体に関わる可能性がある。他のオピオイドと比較したトラマドールによる幻覚の相対リスクは不明のままである。




by anaesthetist | 2019-12-29 20:54 | 薬剤・麻薬 | Comments(0)