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腹部手術後の術後低酸素血症におよぼす静注アセトアミノフェンの影響:FACTOR無作為化臨床試験

・オピオイド誘発性呼吸機能低下や低酸素血症は、術後患者によくみられて重症となり、しばしば認識されていないことが多い。非オピオイド鎮痛薬がオピオイド消費量を減少させる点で、これらにより術後低酸素血症を減少させる可能性がある。

・目的として、低酸素血症の時間がプラシーボを投与された患者よりも静注アセトアミノフェンを投与された患者で短い、という仮説を検証しようとした。

・無作為化プラシーボ比較二重盲検試験で、2つの米国大学病院にて腹部手術をうけた570人の患者を対象とし、2015年2月から2018年10月までに参加し、フォローアップは2019年2月まで、とした。

・参加者は、静注アセトアミノフェン1g(n=289)か、生理食塩水のプラシーボ(n=291)を無作為に投与され、どちらも手術開始時と、術後48時間か退院までの6時間ごとに反復投与された。

・主要評価項目は、1時間あたりの低酸素血症(ヘモグロビン酸素飽和度[SpO2]<90%]となった総時間とし、酸素飽和度の測定は持続的に術後48時間おこなった。副次評価項目は、術後オピオイド消費量・疼痛(0〜10ポイントスケール;0:疼痛無し;10:想像しうる最強の疼痛)・嘔気嘔吐・鎮静度・揮発性麻酔薬の最小肺胞濃度・倦怠感・安静解除時間・呼吸機能、とした。

・580人の患者が無作為化され(平均年齢、49歳;48%が女性)、570人(98%)がこの試験を完了した。主要評価項目である、SpO2が90%未満となった時間の中央値は、アセトアミノフェン群の患者では1時間あたり0.7(四分位範囲[IQR]、0.1〜5.1)分、プラシーボ群の患者では1時間あたり1.1(IQR、0.1〜6.6)分で(P= .29)、推定差の中央値は1時間あたり-0.04(95% CI、-0.18〜0.11)分であった。8つの副次評価項目のうち、アセトアミノフェン群とプラシーボ群で有意に差があるものはなかった。最初48時間以内の疼痛スコアの平均値は、アセトアミノフェン群で4.2(SD、1.8)とプラシーボ群で4.4(SD、1.8)であった(差、-0.28;95% CI、-0.71〜0.15);モルヒネ当量でのオピオイド使用量の中央値はそれぞれ、50mg(IQR、18〜122mg)と58mg(IQR、24〜151mg)で、相乗平均比は0.86(95% CI、0.61〜1.21)であった。

・腹部手術をうける患者において、術後静注アセトアミノフェンの使用はプラシーボとくらべて、48時間での術後低酸素血症の時間を有意に減少させなかった。この所見により、静注アセトアミノフェンの使用が低酸素血症減少のために支持されないわけではない。

by anaesthetist | 2020-07-30 19:13 | 術前・術後管理 | Comments(0)