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局所麻酔薬ボーラス投与1時間以内に斜角筋間神経カテーテルへ生理食塩水注入による鎮痛と片側横隔膜麻痺におよぼす臨床的な影響

・これまでの症例報告によれば、横隔神経ブロックの拮抗を斜角筋間神経ブロックに生理食塩水注入で押し流すことでえられる。この無作為化臨床試験の目的として、生理食塩水注入によって斜角筋間神経ブロックカテーテルから局所麻酔薬を押し流すことで横隔神経と横隔膜機能を温存し、鎮痛は維持できるかどうかを評価しようとした。

・当施設の倫理委員会から承認をへて、臨床試験登録と同意を肩手術を斜角筋間神経ブロックカテーテルでうける患者にえた。16人の患者を無作為化して、術後回復室(PACU)にて神経周囲カテーテルを通じて、生理食塩水を10mLずつに分割して3回注入する(介入群、n=8)か、3回の偽の注入をおこなった(対照群、n=8)。主要評価項目は、同側の片側横隔膜麻痺におよぼす効果、として、副次評価項目には、PACUでのオピオイド消費量・疼痛スコア・腕神経叢の感覚診察や運動機能での変化、を含めた。

・片側横隔膜麻痺の拮抗に有意差はなかった。しかしながら、介入群の多くの患者で完全とは真逆の、最終的に部分的な横隔膜麻痺を呈した(p=0.03)。2群間で、疼痛スコア・PACUでのオピオイド必要量・腕神経叢の運動/感覚診察に有意差はみられなかった。

・患者は全員が介入により持続的な片側横隔膜麻痺をきたしたが、介入群の患者のほとんどが完全な麻痺までいくことはなく、生理食塩水のボーラス投与を増やすことで片側横隔膜麻痺の拮抗を完全にできる可能性が示唆される。斜角筋間神経ブロックカテーテルへの10mLごとの生理食塩水注入は横隔神経ブロックを拮抗するのに臨床的有意な効果をきたさないが、鎮痛を減弱させることもなく、完全な片側横隔膜麻痺へいたることを予防するのに保護的になっている可能性がある。

by anaesthetist | 2020-11-24 18:54 | 末梢神経ブロック | Comments(0)