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術中オピオイドはトリプルネガティブ乳癌での無再発生存期間向上と関連する

・オピオイド誘発性免疫調節はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)で特に重要とおもわれ、そこでの免疫応答は転帰の向上や免疫療法への反応と関連する。我々は術中オピオイドと腫瘍学的転帰の関連性を評価し、TNBCでのオピオイド受容体発現パターンを検証した。

・連続したステージI〜IIIの初発TNBC患者を前向きに整備されているデータベースで同定した。腫瘍微小環境でのオピオイド受容体発現パターンの解析は、公に入手可能なバルクとシングルセルのRNA-seqデータを使用した。

・合計1143のTNBC症例が後向きに解析された。多変量解析にて、より多量の術中オピオイド投与量は有望な無再発生存期間と関連し、ハザード比は経口モルヒネ当量10mg増加ごとに0.93(95%信頼区間 0.88〜0.99)であった(P=0.028)が、全体の生存期間とは有意に関連せず、ハザード比は経口モルヒネ当量10mg増加ごとに0.96(95%信頼区間 0.89〜1.02)であった(P=0.2)。オピオイド受容体のバルクRNA-seq解析によれば、OPRM1がほとんど発現していなかった。正常乳房組織のOGFRとくらべて、OPRK1とOPRD1は発現が増加している一方で、TLR4は発現が減少していた。シングルセルの状況では、OPRM1とOPRD1は検出できなった;OPRK1は主に腫瘍細胞で発現されていた一方、OGFRとTLR4は免疫細胞でより多く発現していた。

・TNBCにおいて、術中オピオイドが無再発生存期間に保護的な影響をおよぼすことがわかった。オピオイド受容体発現はオピオイド作用による正味の保護的効果と一貫しており、腫瘍促進受容体は発現も発現減少もしおらず、抗腫瘍受容体の発現が増加していた。この個別化医療の時代にあって、乳癌サブタイプによって(究極的には個々の患者ごとに)オピオイドの効果を区別しようとすることは継続してくべきであろう。




by anaesthetist | 2020-11-28 19:38 | 悪性腫瘍 | Comments(0)