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待機的帝王切開に対する脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔の手術準備中におけるさまざまな体位の影響:無作為化比較試験

・帝王切開中の術中15°左側傾斜位には最近その胎児酸塩基バランスにおよぼす影響に関して疑問符がついており、術者から不満の声もよくおこっている。我々の仮説として、手術準備中における30°左側傾斜位により手術準備中の15°左側傾斜位か仰臥位とくらべて、胎児の酸塩基バランスが向上する、とした。

・脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔で待機的帝王切開をうける女性を、仰臥位・15°左側傾斜位・30°左側傾斜位に無作為化した;この体位は切開前に仰臥位に戻した。麻酔管理は標準化されて、生理食塩水10mL/kgを輸液負荷してのちに膠質液の負荷をおこなった。低血圧(収縮期血圧[SBP]減少>ベースライン値の20%かSBP<90mmHg)の治療は、母体心拍数によってフェニレフリンかエフェドリンのボーラス投与でおこなった。主要評価項目は臍帯動脈血pHとし、副次評価項目は、麻酔導入後15分以内の母体SBP・手術終了前までに投与された血管作動薬量・帝王切開中の低血圧頻度、とした。

・75人の患者が対象となった。分散分析の検証後、3群間に臍帯動脈血pHの有意差はなかった(仰臥位群:7.31±0.03 vs 15°群:7.30±0.04 vs 30°群:7.31±0.02、P= .28)。30°群では仰臥位群よりも手術終了前に、フェニレフリン(P= .007)やエフェドリン(P= .005)の必要量が有意に少なかった;しかしながら、15°群でみられた唯一の利点として、脊髄くも膜下へ薬剤注入後3分でのSBPの中央値が仰臥位群とくらべて有意に良好であった。

・仰臥位群とくらべて、手術準備中における30°左側傾斜位は胎児の酸塩基状態を有意に向上させなかったが、フェニレフリンやエフェドリンの使用を有意に減らして低血圧の頻度を有意に減少した;しかしながら、これらの利点は15°左側傾斜位群ではみられなかった。

by anaesthetist | 2020-12-24 19:12 | 帝王切開 | Comments(0)