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乳癌手術後の慢性術後疼痛予防に対する傍脊椎ブロック

・乳癌手術(BCS)後の慢性術後疼痛(CPSP)を訴える患者は多い。傍脊椎ブロック(PVB)はBCS後の急性術後疼痛を減少させる方法として有効だが、CPSPを予防する有効性は不明である。このメタ分析ではBCS後のCPSPを予防するにあたりPVBの有効性を評価した。我々はMedline・Embase・CENTRAL・Database of Abstracts of Reviews of Effects・ClinicalTrials.gov・WHO International Clinical Trials Registry Platformを検索して、その中でBCS後のCPSP予防に対してPVBと対照を比較した研究で、創刊から2020年4月までのものを対象とした。主要評価項目は6ヶ月でのCPSPとし、副次評価項目は3ヶ月と12ヶ月でのCPSP・6ヶ月での慢性術後神経因性疼痛(CPSNP)・PVB関連合併症とした。データを統合しランダム効果モデルで解析して、GRADEシステムを使いエビデンスレベルを判定した。合計で12の研究がこの研究で対象となった;6ヶ月の時点でのデータを7つの研究(2161人の患者)から解析すると、BCS後のCPSP予防において有効性の点でPVBと対照で差はみられず(リスク比(RR) 0.82(95% CI 0.62〜1.08))、GRADEシステムによれば中等度のエビデンスレベルであった。同様の結果は3ヶ月と12ヶ月でえられた(それぞれ、RR 0.78(95% CI 0.57〜1.06)、RR 0.45(95% CI 0.14〜1.41))。12ヶ月の時点でのデータを7つの研究(2087人の患者)からの解析によれば、PVBはCPSNPに対して保護的であり、このエビデンスレベルは低かった(RR 0.51(95% CI 0.31〜0.85))。結論として、CPSPはBCS後においてPVBにより有意に予防されることはなかったが、対象研究には限界があった;それにもかかわらず、PVBは急性疼痛から慢性疼痛への移行に影響をおよぼすことでCPSNPを予防できる可能性がある。
by anaesthetist | 2021-01-11 19:26 | 末梢神経ブロック | Comments(0)