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産科の全身麻酔中における偶発的覚醒の頻度:多施設前向きコホート研究

・産科手術の全身麻酔には特有な特徴があり、これが全身麻酔中における偶発的覚醒が高リスクになる可能性がある。この研究の主要な目的として、産科患者の全身麻酔中における意図しない意識覚醒の頻度・経験・心理学的影響を検証しようとした。2017年5月から2018年8月までに、3115人の連続した患者で、産科手術で全身麻酔を英国の72の病院でうけたものを研究に募集した。患者は30日間に標準化された質問を3回くりかえしてうけ、全身麻酔中の記憶を示唆する応答にはインタビューして記録を詳細に調べることで確認した。合計で12人の患者がある程度/おそらく/可能性として覚醒となり、全ての産科手術では256人中1人(95%CI 149〜500)の頻度であった。この頻度は帝王切開手術だと、212人中1人(95%CI 122〜477)であった。苦悩な経験を報告したのは7人(58.3%)で、動けないという感覚が5人(41.7%)、苦痛をともなって動けないのが2人(16.7%)であった。偶発的覚醒が麻酔の導入中と覚醒中におきたのが、覚醒を訴えた患者の9人(75%)であった。全身麻酔中における偶発的覚醒と関連した要因は以下の通りであった:高いBMI(25〜30kg/㎡);低いBMI(<18.5kg/㎡);時間外手術;導入でのケタミンやチオペンタールの使用。30日での標準化された心理学的影響スコアは覚醒患者(中央値(IQR[範囲]) 15(2.7〜52.0[2〜56]))において有意により高く、覚醒のなかった患者では低かった(3(1〜9[0〜64])、p=0.010)。4人の患者は心的外傷後ストレス障害の暫定診断をうけた。我々の結論として、直接的な術後の質問によって産科手術での全身麻酔中に偶発的覚醒の頻度が高いことが明らかになり、これには麻酔の実践・同意・フォローアップにも影響してくる。
by anaesthetist | 2021-01-21 19:57 | 帝王切開 | Comments(0)