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肥満患者の術中人工呼吸器における個別化と固定化の呼気終末陽圧の比較:二次解析

・全身麻酔では肥満患者において無気肺や酸素化悪化となる可能性がある。著者らの仮説として、個別化された呼気終末陽圧(PEEP)により固定化されたPEEPとくらべて、術中酸素化と換気分布を改善する、とした。

・この二次解析で対象となった肥満患者は全員が、ライプツィヒ大学病院で肥満患者における術中保護的換気での高い呼気終末陽圧と低い呼気終末陽圧の多施設比較(PROBESE)試験(n=42)で募集した患者で、同様に地域の単施設試験での肥満患者全員(n=54)も対象となった。両試験の算入基準は、待機的腹腔鏡腹部手術・体格指数35kg/㎡以上・カタロニア手術患者呼吸リスク評価(ARISCAT)スコア26以上、であった。患者はPROBESE研究では4cmH2OのPEEP(n=19)か、リクルートメント手技をしてからの12cmH2OのPEEP(n=21)に無作為化された。単施設研究では5cmH2OのPEEP(n=25)か、リクルートメント手技をしてからの電子インピーダンストモグラフィによる個別化されたPEEP(n=25)に無作為化された。主要評価項目は抜管前のPao2/吸入酸素分圧とし、副次評価項目は術中の健側肺への一回換気量分布と駆動圧とした。

・90人の患者が2つの低いPEEP群を合わせた後に3群で評価された。個別化されたPEEPの中央値は18(四分位範囲、16〜22;範囲、10〜26)cmH2Oであった。抜管前のPao2/吸入酸素分圧は、515(個別化されたPEEP)・370(12cmH2Oの固定化されたPEEP)・305(4〜5cmH2Oの固定化されたPEEP)mmHgであった(個別化されたPEEPに対する差、145;95% CI、91〜200;12cmH2Oの固定化されたPEEPに対してP<0.001と、210;95% CI、164〜257;4〜5cmH2Oの固定化されたPEEPに対してP<0.001)。健側肺領域での術中一回換気量は、43.9%(個別化されたPEEP)・25.9%(12cmH2Oの固定化されたPEEP)・26.8%(4〜5cmH2Oの固定化されたPEEP)であった(個別化されたPEEPに対する差:18.0%;95% CI、8.0〜20.7;12cmH2Oの固定化されたPEEPに対してP<0.001と、17.0%;95% CI、10.0〜20.6;4〜5cmH2Oの固定化されたPEEPに対してP<0.001)。術中駆動圧の中央値は、9.8cmH2O(個別化されたPEEP)・14.4cmH2O(12cmH2Oの固定化されたPEEP)・18.8cmH2O(4〜5cmH2Oの固定化されたPEEP)であった、P<0.001。

・この腹腔鏡手術をうけた肥満患者での二次解析によれば、酸素化・低い駆動圧・電子インピーダンストモグラフィによる健側肺領域への換気再分布が個別化されたPEEPでより良好となった。患者転帰に対する影響は不明なままである。

by anaesthetist | 2021-04-15 19:29 | 肺換気・片肺換気 | Comments(0)