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・静脈鬱血と低血圧が人工心肺をともなった心臓手術後の急性有害腎事象に結びつく病態生理的機序は解明されていない。我々の検証した仮説として、術中低血圧と静脈鬱血が急性腎障害や急性腎疾患と関連する、とした。

・主要曝露項目である静脈鬱血と術中低血圧の定義は、中心静脈圧≧12・16・20mmHgと平均動脈圧≦55・65・75mmHgとした。主要評価項目は急性腎障害と急性腎疾患とした。多変量ロジスティクス回帰モデルとコックス比例ハザードモデルを使って、関連する交絡因子や多重比較で調整した。

・適格な患者5127人中、1070人(20.9%)と327人(7.2%)がそれぞれ、急性腎障害と急性腎疾患をきたした。急性腎障害の頻度は統計学的に静脈鬱血と術中低血圧の両方と関連した。新規発症急性腎疾患の積算発生頻度は100人・日あたり1.34(95%信頼区間[CI]、1.21〜1.60)であった。急性腎疾患は中心静脈圧が10分の12mmHg以上(ハザード比[HR]=1.03;95% CI、1.01〜1.06;P<0.001)・16mmHg以上(HR=1.04;95% CI、1.01〜1.07;P<0.001)・20mmHg以上(HR=1.07;95% CI、1.02〜1.13;P<0.001)となることと関連した。静脈鬱血は新規の腎代替療法リスクの8〜17%増加と関連した。対照的に、術中低血圧は急性腎疾患の発症と関連しなかった。

・静脈鬱血と術中低血圧は両方とも急性腎障害と関連しているが、静脈鬱血のみが人工心肺を必要な心臓手術をうけた患者での急性腎疾患と関連していた。報告された関連性は急性腎疾患における静脈鬱血の病態生理学的な影響を示唆している。

# by anaesthetist | 2022-03-09 19:06 | 腎障害 | Comments(0)

・アスピリンには抗炎症作用と抗血小板作用があり、直接的に細菌増殖を抑制する。こうしたアスピリンの影響により敗血症患者の生存率を改善する可能性がある。我々は大規模全国医療データベースを後向きにレビューして、入院前アスピリン使用と敗血症転帰の関連性を検証しようとした。

・後向き集団ベースコホート研究を台湾における2001年から2011年の全国医療保険研究データベースでおこない、入院前アスピリン使用と敗血症転帰の関連性を検証した。アスピリン使用と敗血症患者の90日死亡率との関連性の検証はロジスティクス回帰モデルを使い、患者をプロペンシティスコアによる逆確立治療重み付け法(IPTW)で重み付けした。各IPTW集団でのカプラン・マイヤー生存曲線を90日死亡率でプロットした。感度分析では、境界内平均生存期間(RMSTs)をカプラン・マイヤー曲線に基づいて計算して、3つのIPTWの方法で現行使用・過去使用・非使用で比較解析した。

・敗血症患者52,982人のうち、12,776人が入院前にアスピリンを内服しており(使用者)、39,081人は入院前にアスピリンを含めて抗血小板薬を服用してなかった(非使用者)。IPTW解析後、非使用者とくらべて、敗血症発症90日以内にアスピリンを内服していた患者では90日死亡率がより低いことがわかった(IPTWオッズ比[OR]、0.90;95%信頼区間[CI]、0.88〜0.93;P< .0001)。IPTW RMST解析によれば、非使用者は平均生存期間が71.75日であったのに対して、現行アスピリン使用者の平均生存期間は73.12日であった。平均生存期間の差は1.37日(95% CI、0.50〜2.24;P= .002)であった。

・入院前のアスピリン治療は敗血症患者において90日死亡率減少と関連した。

# by anaesthetist | 2022-03-08 19:24 | 集中治療 | Comments(0)

・米国では、アルコール使用障害が全成人の5.6%に悪影響をおよぼしている。過度なアルコール摂取により、手術で引きおこされるストレス適応に不可欠な臓器機能に有害な影響がでる。結腸直腸切除術はアルコール使用障害のリスク患者で最もよくおこなわれる主要な手術のひとつである。この研究の目的として、アルコール使用障害が結腸切除術後の入院中転帰におよぼす影響を集団ベース退院データベースを使って評価しようとした。

・研究の場は、集団ベース退院データベースであった。

・対象患者は、Premier医療健康データベースでもとめて、2016年から2019年に結腸切除術をうけた成人患者603,730人であった。

・介入はなかった。

・多重ロジスティクス回帰分析にて、入院中死亡率・入院日数・入院費用と、主要な予測因子としてのアルコール使用障害の関連性を推測し、他の薬物使用障害・精神疾患・うつ・他のElixhauser併存疾患・年齢・支払者・民族・性別・非待機的手術・他のバランスの取れていない変数で調整した。

・アルコール使用障害の退院コードが同定されたのは結腸切除術患者の2.9%で、抽出された結腸切除術患者全体での入院中死亡率は1.4%であった。アルコール使用障害は他の因子で調整後、入院中死亡率リスクの有意な増加と関連した(AOR 1.36、95% CI 1.24〜1.48、p<0.0001)。アルコール使用障害がまた有意に関連したのが、入院日数長期化(AOR 1.45、95% CI 1.39〜1.52、p<0.0001)と入院費用高額化(AOR 1.63、95% CI 1.56〜1.70、p<0.0001)であった。

・アルコール使用障害は、最もよくおこなわれる主要な手術のひとつである結腸切除術をうける患者での、入院中死亡率リスクの増加と関連している。将来の研究にて、アルコール使用障害患者をしっかりと同定しようとすることで、こうした高リスク集団に対して麻酔科医が価値ある周術期介入を提供できるようになるかどうかを検証すべきである。

# by anaesthetist | 2022-03-07 19:20 | アルコール | Comments(0)

・新規発症術後心房細動(POAF)はいくつかの心血管合併症やより高い死亡率と関連している。低酸素血症のようないくつかの病態生理学的過程がPOAFの誘因となりうるが、こうしたことはあまり解明されておらず、POAFは無症候性のことがよくある。大きな消化管悪性腫瘍手術をうける患者にて、我々はワイヤレス反復サンプリングモニタリングによって自動的に推測して検出する形でPOAF頻度を記述して、副次的に先行するバイタルサイン変動とPOAFの関連性を検証しようとした。

・60歳以上で大きな消化管悪性腫瘍手術をうける患者を持続的に術後4日までモニタリングした。心電図波形をモニタリング期間中ずっと毎分ごとにとった。医療スタッフは全ての測定項目を盲検化された。主要評価項目として、POAFの定義は連続した30分以上、専用のコンピューターアルゴリズムで検出されて循環器内科医に確認されたものとした。主要暴露変数は、POAF前に連続した5分以上、末梢酸素飽和度(Spo2)<85%となる事象とした。

・合計30,145時間のモニタリングを398人の患者におこない、患者ごとでは92時間の中央値(四分位範囲[IQR]、54〜96)であった。POAFが検出されたのは26人の患者(6.5%;95%信頼区間[CI]、4.5〜9.4)で、それとくらべてモニタリング期間中に医療スタッフに発見されたのは14人の患者(3.5%;95% CI、1.94〜5.83)であった。POAFは9.4日間の入院(IQR、6.5〜16)でフォローされ、POAFのなかった患者では6.5日間(IQR、2.5〜11)であった。5分間以上のSpo2<85%となる先行する事象(OR、1.02;95% CI、0.24〜4.00;P= .98)や他のバイタルサイン変動はPOAFと有意に関連しなかった。

・新規発症POAFは大きな消化管悪性腫瘍手術後患者の6.5%(95% CI、4.5〜9.4)にみられ、症例の3分の1は医療スタッフに検出されなかった(35%;95% CI、17〜56)。POAFはバイタルサイン変動が先行することはなかった。

# by anaesthetist | 2022-03-06 18:26 | 合併症 | Comments(0)

・COVID-19パンデミックが始まって以降、SARS-CoV-2感染症の妊産婦における麻酔転帰を報告した研究は少ない。我々がレビューしたのは、イングランド北西部の10つの病院で2020年4月1日から2021年5月31日までにSARS-CoV-2検査陽性と確定された症候性と無症候性の妊産婦で利用された分娩時の鎮痛と麻酔介入であった。解析された主要評価項目は、分娩や帝王切開で利用された鎮痛/麻酔法であった。副次評価項目は、母体背景の比較・帝王切開率・複合的新生児有害事象とともに母体の集中治療率、とした。SARS-CoV-2検査陽性がみられたのは836人の妊産婦で、263人(31.4%)はCOVID-19の症状があった。分娩時に脊髄幹鎮痛が利用されたのは、経膣分娩を続けた509人の妊産婦中104人(20.4%)であった。硬膜外鎮痛率の差は症候性と無症候性の妊産婦でみられなかった(OR 1.03、95%CI 0.64〜1.67;p=0.90)。帝王切開をうけた310人の妊産婦における脊髄幹麻酔率は94.2%(95%CI 90.6〜96.0%)であった。全身麻酔率は症候性と無症候性の妊産婦で同等であった(6% vs. 5.7%;p=0.52)。症候性の妊産婦はより、多産であること(OR 1.64、95%CI 1.19〜2.22;p=0.002);アジア系民族であること(OR 1.54、95%CI 1.04〜2.28;p=0.03);早産であること(OR 2.16、95%CI 1.47〜3.19;p=0.001);高い帝王切開率(44.5% vs. 33.7%;OR 1.57、95%CI 1.16〜2.12;p=0.008);産前(8% vs. 0%、p=0.001)と産後(11% vs. 3.5%;OR 3.43、95%CI 1.83〜6.52;p=0.001)での高い集中治療利用率であることが多かった。8人の新生児でSARS-CoV-2検査陽性であった一方、複合的新生児有害事象は症候性と無症候性の母からうまれた新生児間で差はなかった(25.8% vs. 23.8%;OR 1.11、95%CI 0.78〜1.57;p=0.55)。COVID-19である女性では、非脊髄幹鎮痛法が分娩によく利用された一方、脊髄幹麻酔が帝王切開の大半で使われた。COVID-19による症候性の女性は、早産・帝王切開・周産期集中治療室入室を含めた重大な母体合併症リスクが増加した。




# by anaesthetist | 2022-03-05 19:13 | COVID-19 | Comments(0)