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・フレイルは身体的と認知的な予備機能が減少した状態で、患者はさまざまなストレスをうけやすくなり、有害転帰と関連したり医療資源利用が増加したりする。本研究の目的として、腹直筋(RA)と上腕二頭筋(BB)を超音波測定することで膝関節全置換術を予定した患者のフレイルを予測できるかどうかを検証しようとした。

・フレイルの評価は60歳以上の成人で臨床フレイルスケールを使った。腹直筋・BB・大腿四頭筋の超音波測定を大腿周囲長の測定とともに術前におこなった。未調整・BMI・体表面積(BSA)で調整された測定値の予測性能を受信者操作特性曲線解析と曲線下面積(AUC)値で評価した。術後転帰として集中治療室や高度看護施設への入室/入居・せん妄・転倒・再入院・30日死亡等を記録した。

・解析したデータは148人の患者からのものであった。BB厚はフレイルを適正に予測できた。BMI(0.708、95% CI 0.602〜0.814;P<0.001)とBSA(0.708、95% CI 0.598〜0.817;P<0.001)の双方で調整されたBBの平均測定値は最も高いAUC値となった。RA筋測定はフレイルを識別できなかった。BMIで調整された右大腿四頭筋厚(AUC 0.614、95% CI 0.503=0.725;P=0.044)・左大腿四頭筋厚(AUC 0.648、95% CI 0.528=0.769;P=0.016)・平均大腿周囲長(AUC 0.630、95% CI 0.511=0.750;P=0.033)の測定値は統計学的に有意であったが、AUC値は低かった。


# by anaesthetist | 2024-03-08 19:51 | 合併症 | Comments(0)

・研究の目的として、区域麻酔でケタミンを局所麻酔薬に加えることで鎮痛時間を延長させることができるかどうかを同定しようとした。

・研究デザインは、系統的レビューと無作為化比較試験のメタ解析であった。

・研究の場は、大半の日で手術室と術後回復室であった。

・合計1011人のASA術前状態分類IとIIの患者が本解析の対象となった。施行された手術は帝王切開・整形外科手術・乳房根治術・泌尿器科手術・下腹部手術・腔内小線源インプラント挿入術であった。

・電子データベースを広範囲に検索後、患者は区域麻酔を全身麻酔と併用か併用なしで、ケタミンをLAに加えるか加えないかでうけて本解析の対象となった。区域麻酔としては脊髄くも膜下麻酔・腕神経叢ブロック・胸筋神経ブロック・腹横筋面ブロック・大腿神経ブロック・坐骨神経ブロックであった。

・主要評価項目は鎮痛時間とした。副次評価項目は運動ブロックと神経ブロックの持続時間とオンセット時間に加えて、ケタミン関連有害事象とした。データ表記は連続データでは平均差とし、二項データではオッズ比(OR)に95%信頼区間を併用した。対象研究のバイアスリスクは無作為化試験のための改訂コクランバイアスリスクツールで評価した。各転帰に対するエビデンスの質はGRADEワーキンググループシステムに従って格付けした。

・20の無作為化比較試験が本解析の対象となった。ケタミンをLAの補助薬として使用すると、鎮痛時間は延長し(172.21分、95% CI、118.20〜226.22;P<0.00001、I²=98%)、特に末梢神経ブロックでそうであった(366.96分、95% CI、154.19〜579.94;P=0.0007、I²=98%)。副次評価項目によれば、ケタミンは感覚ブロックの持続時間を延長した(29.12分、95% CI、10.22〜48.01;P=0.003、I²=96%)が、運動ブロックの持続時間(6.94分、95% CI、-2.65〜16.53;P=0.16、I²=84%)・運動ブロックと感覚ブロックのオンセット時間(運動ブロックオンセット時間、-1.17分、95% CI、-2.67〜0.34;P=0.13、I²=100%;感覚ブロックオンセット時間、-0.33分、95% CI、-0.87〜0.20;P=0.23、I²=96%)に加えてケタミン関連有害事象(OR、1.97、95% CI、0.93〜4.17;P=0.08、I²=57%)に影響しなかった。

・本研究によれば、ケタミンは麻酔法によらず、局所麻酔薬の補助薬として理想的であるだろう。全般的に、エビデンスの質は低かった。

# by anaesthetist | 2024-03-07 18:57 | 薬剤・麻薬 | Comments(0)

・周術期の赤血球(RBC)輸血は静脈血栓塞栓性(VTE)事象を増やす。これまでの研究によれば外傷後の血漿投与はVTE増加と関連しているが、周術期の血漿追加に関連したリスクは不明である。

・米国医療訴訟とEHRのデータベース(TriNetX Diamond Network)が検証された。周術期に血漿とRBCを投与された外科患者を、周術期にRBCを投与されたが血漿は投与されなかった患者と比較された。サブ解析として(1)全手術(n=48,580)と(2)心臓血管手術(n=38,918)を対象とした。プロペンシティスコアマッチングを手術時の年齢・民族・人種・性別・過体重と肥満・2型糖尿病・リポプロテイン代謝疾患・本態性高血圧・悪性腫瘍・ニコチン依存・凝固障害・敗血症・慢性腎疾患・肝疾患・非ステロイド性抗炎症鎮痛薬・血小板凝集抑制薬・抗凝固薬・ヘモグロビン値・外来患者サービス利用・入院サービスでおこなった;術式は『全手術』解析の対象とした。転帰は30日死亡・術後VTE・肺塞栓(PE)・播種性血管内凝固症候群(DIC)とした。

・手術集団でマッチング後、RBCのみとくらべて、血漿+RBCは術後死亡(4.52% vs 3.32%、リスク比[RR}:1.36[95%信頼区間、1.24〜1.49])・VTE(3.92% vs 2.70%、RR:1.36[1.24〜1.49])・PE(1.94% vs 1.33%、RR:1.46[1.26〜1.68])・DIC(0.96% vs 0.35%、RR:2.75[2.15〜3.53])の高いリスクと関連した。心臓血管患者の周術期では、血漿をRBC輸血に追加すると同様なリスク増加と関連した。

・周術期RBC輸血と比較して、血漿の追加は全手術患者と心臓血管手術患者で30日術後死亡・VTE・PE・DICのリスク増加と関連した。不必要な血漿輸血を減らすことは、患者血液管理の焦点として医療ケアの全般的な価値を向上させるべきであろう。

# by anaesthetist | 2024-03-06 19:11 | 輸液・輸血 | Comments(0)

・瞳孔変化を定量的に測定することを鎮静中のリッチモンドせん妄鎮静スケール(RASS)とスペクトル端周波数(SEF)と対比しての評価はこれまでされてこなかった。本研究の目的として、鎮静された重症成人患者でこれらの測定値に対する瞳孔測定を評価しようとした。

・人工呼吸器管理されて鎮静下の患者において、瞳孔変数を自動瞳孔測定機で鎮静薬を中止後のRASSが-5から0の各レベルで測定し、一方で各RASSレベルで処理脳波変数を持続的に表示してSEFを記録した。瞳孔対光反射割合(%PLR)とRASSの相関関係、%PLRとSEFの相関関係を検証した。%PLRが軽鎮静(RASS≧-2)・中等鎮静(RASS=-3)・深鎮静(RASS≦-4)を識別する性能を受信者操作特性(ROC)曲線下面積で評価した。

・合計163組の測定値が38人の患者で記録された。鎮静深度を浅くしていくと%PLRは20%(四分位範囲 17〜25%)から36%(四分位範囲 33〜40%)まで徐々に増加した(P<0.001)。強い相関関係が%PLRとRASS(Rho=0.635)、%PLRとSEF(R=0.641)にみられた。%PLR閾値が28%による曲線下面積(AUC)が0.87で中等/軽鎮静と深鎮静を識別でき、感度が83%と特異度が83%であった。閾値が31%によるAUCが0.82で軽鎮静と中等/深鎮静を識別でき、感度が81%と特異度が75%であった。

・%PLRを定量的に評価すれば、重症患者において、鎮静深度の他の指標と相関した。

# by anaesthetist | 2024-03-05 19:26 | 集中治療 | Comments(0)

・心筋トロポニン高値は周術期の心臓合併症や死亡の予後因子である。緊急腹部手術をうける高齢患者でフレイルはリスクファクターと認識されているが、こうした脆弱性のある患者での心筋トロポニンによる予後的重要性はほとんど知られていない。そこで我々は、緊急腹部手術をうける高齢患者集団における高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)高値とフレイルの予後的重要性を検証した。

・我々が対象とした75歳以上の連続した患者は、72時間以内に腹部を病因として手術が必要と定義された緊急腹部手術をノルウェーの大学病院でうけた。血管手術か手術不可能な悪性腫瘍で姑息手術をうけた患者は除外された。術前に、フレイルを臨床フレイルスケール(CFS)で評価し、血液採取してhs-cTnTを測定した。CFSとhs-cTnT濃度の予測性能を受信者操作特性(ROC)曲線とコックス比例ハザード回帰で、30日死亡を主要評価項目として評価した。副次評価項目に含まれたのは(1)全原因による30日死亡と、心筋梗塞・非致死性心停止・冠血行再建で定義された主要有害心臓事象(MACE)の複合体と、(2)90日死亡であった。

・210人がスクリーニングされて156人が適格な患者となり、そのうち血液採取を利用できたのが146人で、対象となった。トロポニン濃度が99パーセンタイル上限参考値(URL)を超えたのは術前と術後で患者の83%と89%であった。患者のうち53%が脆弱性ありかフレイル(CFS≧4)と分類された。30日死亡率は12%(146人中18人)であった。術前においてhs-cTnT≧34ng/mlという閾値は30日死亡(ハザード比[HR] 3.14、95%信頼区間[CI]、1.13〜9.45)と、30日死亡とMACEの複合体(HR 2.58、95% CI、1.07〜6.49)を独立して予測した。本モデルにおいて、フレイル(連続CFSスコア)もまた30日死亡(HR 1.42、95% CI、1.01〜2.00)と30日死亡やMACE(HR 1.37、95% CI、1.02〜1.84)を独立して予測した。トロポニンとフレイルの併用、0.14×hs-cTnT+4.0×CFSによって優れた予測性能を有し(受信者操作特性曲線下面積[AUC] 0.79、95% CI、0.68〜0.88)、それとくらべてトロポニン濃度(AUC 0.69、95% CI、0.55〜0.83)やフレイル(AUC 0.69、95% CI、0.57〜0.82)のみでは劣った。

・高齢患者の緊急腹部手術後、術前の心筋トロポニン高値とフレイルは独立した30日死亡の予測因子であった。トロポニン高値とフレイルの併用はトロポニンやフレイルのみよりも予後予測に良好な情報となるようであった。こうした所見は独立した集団でも妥当性を確認する必要がある。

# by anaesthetist | 2024-03-04 19:03 | 合併症 | Comments(0)